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iemiru コラム vol.485

昔ながらの土壁が再ブーム!?日本の気候に最適な特徴とは

土壁とは、土に藁や砂を混ぜて水で練ったものを塗り固めた壁のことです。日本で昔ながらに親しまれてきたものですが、近代化に伴って使われる機会が失われてきました。しかし、最近になって土壁の再ブームが起きていると言います。 住宅業界でリバイバルを引き起こしている土壁の魅力とは…?優れたその性能を解説しながら、自宅に取り入れる時のポイントやお手入れ方法をご紹介いたします。

土壁の基本を再確認!

土壁は日本で古くから利用されてきた壁のひとつです。起源は正確に分かっていないようですが、江戸時代にはお城や蔵、一般住居まで広く使われていました。今でも、古い町並みを残す地域では土壁がよく見られます。

古くから使用されてきた塗装方法

土壁は木造建築よりも火事が広がりにくい耐火性があります。さらに、壁としての強度もあり生産が容易であったことから、火事が多かった江戸の町では広く使用されていたと言われています。 また、土壁はその質感や風合いも評価されています。土壁は茶室の壁としても有名で、かの千利休は土壁が持つ独特の風合いや情緒深い佇まいを好んで、積極的に取り入れていました。有名な茶室「待庵」の壁は土壁で造られています。 土壁とひとくちに言っても種類は豊富で、京都で造られる土壁を京壁と言い、他には原料の土に砂や鉄といった素材を混ぜて独自の風合いを表現した聚楽壁(じゅらくへき)、大津壁(おおつかべ)、錆壁(さびかべ)などがあります。 このように、日本では馴染み深い壁のひとつでしたが、近代的な住宅が増えるにつれ需要が少なくなり、今では土壁を施工できる職人さんが非常に少ないのが現状です。 土壁の需要が減ってしまった理由は、施工の難しさと工期の長さにあります。土壁は完成するまでに2~3ヶ月ほど費やされることもあるため、効率やスピードが優先される現代では相性が悪かったのでしょう。また、土壁の強度や見た目は、職人さんの技術力に大きく影響されますが、その高度な技術を引き継いでいる人が少なくなっていることも挙げられます。 ただ、土壁はメリットが多い魅力的な壁です。再ブームが起きているワケは、土壁が持つ効果や働きに隠されています。

日本の季節に合っている

土壁は、古くから使われている酒蔵や貯蔵庫でよく見られます。その理由は、気温や湿度を調節してくれる力にあります。 日本の気候は、四季によって気温が大きく変化し、さらに雨が多く”多湿”という特徴があります。しかし、酒造りには湿度や気温の調整が必要になるため、調湿性に優れた土壁が酒蔵などに活用されました。 また、土壁の家は夏はひんやりと涼しく、冬は優しい温かさを持続しやすい特徴があります。様々な季節が訪れる日本で、最も快適に過ごせる壁だと言っても過言ではありません。

土壁の優れている特徴

では、土壁にはどんな魅力があるのでしょうか?土壁には、調湿作用・断熱機能・防火機能という主に3つの特徴があります。詳しく見ていきましょう。

調湿作用

土壁には湿度を調整する性質があります。湿度が高ければ空気中の水分を吸収し、湿度が低ければ水分を放出して過度な乾燥を防ぎます。 日本における梅雨の時期はジメジメと不快な気候ですが、土壁の家であれば湿気を吸い取ってくれるため、室内干ししても快適だと言います。また、冬に多い結露も防止してくれるため、結露によるカビの発生やシックハウス対策にも有効とされています。 さらに、水分だけでなく空気の通りも良いため、窓を開けて換気をしなくても常に室内の空気をキレイに保つことができます。土壁はまるで生きているかのように水分や空気を吸ったり吐いたりするため、「呼吸する壁」とも言われます。

断熱機能

土壁は、熱や冷気を逃がしにくいという性質を持っています。そのため、冬場は暖房の温かさを維持しやすく保温性に優れています。一般住宅では隙間風や窓際の寒さが目立ちますが、土壁の家はぽかぽかとした自然のぬくもりを感じることができます。調湿作用によっても体感温度が快適に感じやすいことも、あたたかい理由のひとつです。 極端な温度変化を嫌う醤油やお酒造りの蔵に土壁が使われているのも、こうした断熱性能を利用しているためです。

防火機能

土は本来、燃えにくいものです。そのため、土壁は耐火性に優れています。また、土壁は火に接触して温度が上がっても有害な化学物質を放出しません。建築基準法の観点から見ても、安全な防火構造として認められています。 火事が多かった江戸の住居や蔵の多くに土壁が使われていたことも頷けますね。

脱臭作用

土壁には、家にこもりがちな生活臭をにおいにくくする性質あります。料理のニオイ・ペットのニオイ・人の汗や皮脂汚れから発生するニオイなど、家の中には様々なニオイ成分が漂っています。このニオイ成分の大部分は空気中に含まれるため、土壁が空気と一緒に吸収してくれる働きがあります。 また、空気中に含まれるタバコなどの汚染物質を無害に濾過してくれる効果もあると言います。アレルギー症状やシックハウスの対策としても期待できます。

抑えておきたい土壁のデメリット

そんな魅力が多い土壁にも弱点があります。日本で土壁は見られなくなった理由は、これらのデメリットが影響しています。

施工業者により出来が変わる

土壁は繊細な性質を持っているため、塗り方ひとつで強度が偏ったりヒビ割れしやすかったりします。そのため、専門の技術を持った施工業者しか造ることができません。 また、職人さんの腕によって、土壁の美しさや強度に差がでます。その時の季節や湿度によっても土の粘度や乾燥時間を調整しなければなりません。技術力はさることながら経験も必要とすることが、土壁作りの難しい点です。 しかし、土壁は手作りならではの質感とぬくもりが魅力です。職人さんのセンスによって土の色合いや質感が大きく異なり、左官コテ特有の凹凸や模様は世界でひとつのデザインになります。

施工期間が長くなる

土壁造りは何重も塗り重ねながら自然乾燥させるため、施工時間が長期に渡ります。送風などで無理に乾かすとヒビが割れるため、必ず自然乾燥でなければなりません。 土壁を住宅に採用する際は、まず竹の枠を組み立てるところから始めます。土は藁と混ぜて時間を置き、自然発酵させることで強度がある良い土になります。 土が出来上がったら竹枠へ少しずつ塗っていき、一度塗るごとに自然乾燥させます。乾燥する時間は気温や湿度によっても大きく異なりますが、だいたいは夏で約2週間、冬は1ヶ月ほどかかります。そのため、塗り重ねて完成するまでは2ヶ月~半年ほど時間を有することも少なくありません。

ヒビ割れが起こる可能性がある

土壁はちょっとした振動や圧力の影響で、劣化に伴いヒビが割れることがあります。職人の腕や壁の強度にもよりますが、どんなに精巧に造ったとしてもヒビ割れしやすい性質があります。 ただ、ヒビが割れたとしても住宅の性能が大きく変化することはあまりなく、ヒビを埋めるように塗り直して元に戻すことができます。

土壁の塗替えを考えるチェックポイント

土壁は時間の経過と共に劣化します。劣化したら塗り替えや補修するタイミングです。劣化した状態とチェックポイントについて見てみましょう。

ぼろぼろと崩れてくる

土壁は経年劣化に伴いボロボロと剥がれたり、亀裂が入ったところから壁が落ちてくることがあります。放置すると剥落したところからどんどん連鎖していきます。原因は月日の経過と共に水分の調整ができなくなったり、強度が失われたりするためです。強い衝撃や圧迫が原因でポロっと崩れることもあります。 さらに土壁が崩れることで土埃が発生し、家の中がホコリっぽくなることもあります。シックハウスやアレルギー症状の原因にもなることから、土壁の剥離が起きたら早期に対応することが望ましいと言えます。

カビが生えている

土壁が劣化すると蓄えた水分を放出できなくなりカビが発生しやすくなります。また、長年蓄積された手垢や生活の汚れが養分になってカビが増えてしまいます。 カビは、水玉模様のように丸く黒いシミになって発生します。土壁の角や手の触れるところからだんだんとシミが濃くなり、気づいた時には広く繁殖していたということも少なくありません。 薄汚れた土壁は見た目が悪いだけでなく、アレルギー症状や喘息の原因になります。そのため、カビの生えた部分はすべて取り除くことが適切です。上から板やクロスを重ねただけでは解決しないため注意が必要です。

ヒビ割れが現れた

土壁は劣化するとヒビ割れが起こりやすくなります。調湿性が低下し乾燥してしまったことや、地震の揺れ・強い衝撃が原因です。ヒビを放置しているとそこから土壁が崩れたり、家の耐震性に問題が起こります。大きく亀裂が入ると土壁が倒れる可能性もあります。 通常は、土壁が割れたらそこへ新しい土のパテを塗り込めば修繕できますが、うまく塗れずに中に隙間が生じると再びヒビが入りやすくなります。また、上から塗った土は既存の土壁と同じ色や質感を表現することが難しくなります。

土壁の補修方法

劣化によって問題が発生した土壁は、どのように補修するべきでしょうか?おすすめの3つの方法を挙げてみました。

漆喰を使用する

土壁の補修には漆喰が利用されることが多々あります。実際に、古い建築物によく見られる白い壁は、土壁に漆喰を塗って仕上げているものです。 漆喰とは、真っ白で美しい色味を持つ石灰石が原料です。石灰石を焼いて消石灰(水酸化カルシウム)に変化させ、水や糊を加えて練った状態にしてコテで塗っていきます。漆喰は二酸化炭素と結合すると強く固まるため、古くから日本で使われてきた外壁材のひとつ。強アルカリ性の成分であるため、防カビ効果も期待できます。蔵に収納した絵巻や骨董品が綺麗な状態で保管できるのは、この漆喰の効果のおかげです。 壁に塗ると白くマットな質感が美しく、滑らかでツルツルとしたテクスチャーが特徴です。土壁のようにボロボロと剥離しないことが魅力とされます。 また、漆喰は土壁同様に調湿性が高いため、土壁本来の効果を失わずに補修ができます。漆喰は、土壁の仕上げ材として相性が良いのです。

土壁塗装

土壁に塗料を塗って補修する方法があります。漆喰を塗るよりも、乾燥させる時間が短くコストを抑えることができます。また、色を変えれば室内の雰囲気をがらっと変えることもできます。 まずは、塗料を塗る前にシーラーという下地を塗ります。これは塗料の吸着や仕上がりを美しくするものです。シーラーが乾いたら上から塗装していきます。1度塗りでは色むらがでたり、土壁が剥がれやすいため、2~3度重ねて塗るとよいでしょう。 ただ、塗装には弱点があります。塗装によって土壁が呼吸できなくなり調湿性は失われます。土壁の効果を持続させたい場合はおすすめできません。

壁紙を貼る

土壁の上から壁紙を貼る方法は「部屋の雰囲気を変えたい」「簡単に補修したい」という方におすすめです。壁紙を貼ってしまえば、土壁が落ちてくることが無くなり、汚れが付着しにくくお手入れも容易です。 まずは、ヒビ割れの箇所や凹凸のある部分を埋めるようにしてパテで平らにします。その上から土壁を覆うようにして壁紙を貼っていきます。 ただ、土壁の剥落がひどく平らにすることが難しい場合は、石膏ボードなどの板を貼り付けて平らにします。費用はかかりますが、土壁の凹凸を確実に抑えることができ、安定した美しい仕上がりになります。 「壁紙にしたいけど和のぬくもりは保ちたい」という方には、和紙クロスや珪藻土クロスといった壁紙がおすすめです。なかでも珪藻土クロスは塗り壁の風合いを楽しむことができます。

土壁を取り入れて住宅を快適に!

土壁が古くから愛されてきた理由は、自然由来の美しい色合いや質感だけでなく、日本での暮らしを快適にする特殊な性質を持っているからです。

住宅と一緒に生活をしよう!

土壁は日本特有の気候や風土を味方につけ、心地良い暮らしをもたらす魅力的な壁材です。梅雨から夏にかけては、サラリと涼しく気持ち良い空間に変化させ、冬にはポカポカと温かい室温を維持してくれます。大切な家族が暮らす一生ものの住宅だからこそ、優れた建材を選びたいものですね。この機会に、土壁の魅力を見つめ直してみるのもよいでしょう。

日頃のメンテナンスが重要

土壁は繊細な素材です。呼吸を続けてもらうためには、細やかなメンテナンスが欠かせません。掃除や定期的な補修を行うことで、美しい見た目や効果は長続きします。手を抜かずにお手入れすることが大切ですね。

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