iemiru コラム vol.139
結露の建築用語解説!結露のせいで家の寿命が縮む?正しい対策で家を守ろう
結露とはいったい何?住宅の結露には2種類ある!
「結露」と聞くと、窓ガラスや押し入れの中の壁に付いた水滴など、直接目につく場所に発生するものを思い浮かべる人が多くいると思いますが、実は結露には、他にももう一つ発生する場所があります。それは、私達が直接見ることができない場所です。 結露は住宅にも人体にも様々な悪影響を及ぼします。結露が発生する仕組みを知って、今後の結露対策に役立てましょう。
結露が発生する原因は室内と外部の温度差
眼鏡が曇ったり、満員電車の窓ガラスが曇ったりするのも結露です。結露は身近で起こるよくある現象です。 では、眼鏡やガラスが曇ったり曇らなかったりするのはなぜでしょう。 結露が発生する仕組みはどうなっているのかというと。空気の温度と水蒸気の量が関係しています。空気は含ませることができる水蒸気量が決まっていて、空気が含ませることができる水蒸気量の限界を超えたとき、含まれていた水蒸気は気体から液体に変化し結露となります。 空気は温度によって含ませることができる水蒸気量が異なり、温度が高いほどたくさんの水蒸気を含むことができます。そして、空気が含ませることができる限界の水蒸気量を飽和水蒸気量と言います。 空気は温度によってどのくらいの水蒸気を含むことができるかというと、30度では30.3g/立米・20度では17.3g/立米・10度では9.4g/立米・0度では4.8g/立米の水蒸気を含むことができます。水蒸気量がその空気が含ませることができる最大の値にあるとき、湿度は100%の状態になります。 例えば、温度30度・湿度50%の場合、水蒸気量は15.15gです。水蒸気量を変えず、この空気を0度まで下げた場合、15.15gと4.8gの差し引き10.35gが気体から液体に変わり結露となって現れます。 このようにして起こる結露の仕組みを踏まえて、窓ガラスに結露が発生する原因を解説していきます。 室内が暖かく外が寒いとき、外気の影響で窓ガラスが室温より冷たくなります。冷たい窓ガラスに触れた空気は温度が下がり飽和水蒸気量が小さくなります。すると、空気中に存在することができなくなった水蒸気が結露となって窓ガラスに付いて現れます。このように、室内と外部の温度差が原因で窓ガラスに結露が発生しているのです。
窓やサッシに発生する“表面結露”
表面結露は、文字通り窓やサッシ、天井、壁など建材の表面に発生する結露です。建材の表面に発生するため見つけやすく、すぐに確認することができるのが表面結露です。
見えないところに発生する“内部結露”
内部結露は、主に壁の内部に発生する結露です。表面上には現れず、見えないところで発生するためすぐに気づくことが難しいのが内部結露です。
表面結露によってどんな被害が起こるの?
表面結露はガラスや壁が水滴で濡れるだけではなく、放っておくと様々な悪影響を及ぼします。では、どんな悪影響を及ぼして被害が起こるのか詳しく見ていきましょう。
水滴がカビの原因になる
建材に水滴がついて、濡れたままの状態で放置しているとカビが発生する原因になります。浴室に生えるカビを見てもわかるように、カビは湿度を好みます。室内も浴室と同じように濡れて湿度が高い状態が続くとカビが発生しやすい環境になってしまいます。
喘息やアトピーの原因になる
カビが発生しやすい場所はダニも発生しやすい場所です。カビの胞子やダニのフンや死骸は喘息やアトピーの原因の一つとされています。結露が原因で家自体に被害を与えるだけでなく、私達の健康に被害が及ぶ可能性がでてきます。
壁紙や柱の傷みの原因になる
結露によって発生したカビは有機化合物でできたビニールクロスや合成皮革、塗料などの建材が大好物で栄養源としています。そのためカビがどんどん広がり、カビによる汚れや壁紙の剥がれやすさなどの劣化に繋がります。 また、柱が結露するということは柱が多くの水分を含んでいるということです。木材は長時間水分を含んだ状態が続くと腐敗し、強度が下がってしまいます。 一時的に発生する結露はそれほど大きな被害を起こす可能性は低いと考えられますが、長時間に渡って結露が発生した状況は人にも建物にも被害を与える可能性が高くなることを知っておきましょう。
表面結露はどうやって防ぐの?
うれしくない影響を与える表面結露をどうやって防いだらいいのでしょうか?表面結露が起きる原因を断ち切って、結露を起こさないための対策を見ていきましょう。自宅を見直して、改善できる対策があればすぐに取り入れていきましょう。
結露を見つけたときはすぐに拭き取ろう
できてしまう結露に対してはこまめな拭き取りが有効です。結露して濡れた状態が長く続くことがカビ発生の原因です。結露に気づいたらすぐに拭き取ってカビの発生を防ぎましょう。
家具の配置やクローゼットの整理をすることで空気の滞留を防ごう
気流の流れを作ることで湿った空気の滞りを防ぎ、結露が発生しにくい環境にすることができます。そのため、家具は結露が起こりやすい壁から5cm程度離して置くことや、クローゼットの中を物で埋め尽くさず、ある程度空間に余裕ができるように整理するようにして使いましょう。
こまめな換気で室内の湿度を下げよう
結露を起こさないために、湿度の高い部屋の空気を外へ追い出すことが必要です。換気することで、湿度の高い室内の空気を外へ出し、外の乾いた空気を中へ取り入れることができるので湿度を下げるのに効果的です。 特に、人が多く集まったときや、石油ストーブ、ガスファンヒーターの使用など水蒸気を多く発生させる状況にある場合は、こまめな換気を心がけましょう。
お風呂やキッチンでは換気扇を忘れずに使用しよう
調理や食器洗い、入浴など水蒸気が多く発生した場合は必ず換気扇を使って湿度の高くなった空気を外へ排出しましょう。料理中などに発生した湿気はすぐに外へ出してしまえば結露を起こす心配はありません。
表面結露が特に起こりやすい場所はどこ?
結露が起こる仕組みを理解していれば、家の中でどんな場所が結露になる可能性が高くなるのかが予測できます。 紹介してきたように、結露は空気の温度差が大きくなる場所や空気の流れが悪いところで発生する可能性が高くなります。 では、家の中でこの条件にあてはまるのはどの空間になるのでしょうか?マンションと一戸建ての場合で見ていきましょう。
マンションの場合
・北側の外気に面した壁 北側は日差しがなく壁が冷たくなりやすい環境です。そのため、室内の暖かい空気が触れると結露が起きます。 ・暖房していない部屋 空気は温かい方から冷たい方へ流れる習性があります。そのため、台所やリビングの暖かい空気が暖房していない部屋に流れ込み、空気に温度差が生じることから結露しやすい環境になります。 ・サッシまわり これまで紹介してきたとおり、サッシは外気の影響を受けやすいため室内の暖かい空気との温度差によって結露を起こします。
一戸建ての場合
・サッシまわり マンションと同じく結露が起こりやすい場所です。ただ、結露が発生したらこまめに拭くことでカビの発生など被害が出ることはありません。 ・押し入れの中 通気性の悪さと、暖かい空気との温度差が原因で結露を起こしやすい場所です。特に押入れの壁が外気に面している場合、外気の影響を受けて押し入れ内の温度が下がる傾向にあるため温度差が更に大きくなるので注意が必要です。 ・外気に面する全ての壁 特に北側は外気の影響を受けやすいですが、外気に面する壁は全て室内との温度差が生じやすくなるため結露発生には注意が必要です。 ・1階の間仕切り壁の下部 在来工法で建てられている場合、施工方法によって床下の湿気が壁の中に侵入しやすい可能性があります。この場合、外気に面していない間仕切り壁であっても、壁の下のほうが冷たくなり結露が起きやすくなります。
内部結露は表面結露より危険!
内部結露は表面結露に比べて建物に甚大な被害をもたらす可能性が高くなります。それは、建物の骨組みとなる構造躯体に影響を与える可能性があるためです。 内部結露は構造躯体にどんな影響を及ぼし、どんな被害を起こしているのか見ていきましょう。
結露していることに気づきにくいため、被害が拡大しやすい
内部結露は見えないところで発生するので発見が遅れてしまい、気づいたときには建物が大きな被害を受けているという状況はよくあります。 発見が遅れると被害が進行し、建物が崩壊するかもしれない危険な状況になる場合もあります。
耐震強度が下がり、家の寿命が短くなる
内部結露によって土台や柱など木材部分は木腐敗菌が増殖し木を腐らせます。そして、腐った木はシロアリやカビの温床になります。シロアリやカビによってボロボロになった木材は強度が下がり、建物が持っている本来の耐用年数よりも早い時期に寿命がきてしまいます。
設計段階から気を付けないと対処が難しい
内部結露の発生のしやすさは、建物の施工方法によって大きく変わってきます。そのため、建てた後からの対処が難しくなります。設計段階から結露に対する予防対策をしておくことが必要です。
今からでも遅くない!内部結露を防止するリフォーム
設計段階から内部結露対策を考慮しておくことが大切ですが、建てた後でも防止策をすることは可能です。具体的な防止策を見ていきましょう。
壁紙をビニール製にして内部に湿気が届かないようにする
最も手軽な内部結露対策が壁紙をビニール製に張り替えることです。ビニールは水を通しません。そのため、室内の湿気を壁の中に侵入させにくくする効果があります。 壁の中に湿気が届きにくい反面、壁紙の表面に結露が起こりやすくなります。しかし、表面結露は簡単に拭き取ることができます。壁を剥がすなど大掛かりな結露対策を取る前に、壁紙をビニール製に変えることも一つの方法です。
外張り断熱にリフォームする
外張り断熱リフォームとは既存の外壁の上に新しい外壁を取り付ける方法です。通常外張り断熱は既存の外壁に厚み18mmの胴縁と言われる木材を取り付けます。胴縁は新しく取り付ける外壁材の下地として利用する他に、既存の外壁と新しい外壁の間に約18mmの通気層を作ることで湿度の調整をする役割をします。 下から入った空気が通気層を通り上昇し、軒裏などにある通気口から外部に排出されます。この一連の空気の流れが室内から入ってくる湿気を取り除き、建材をどんどん乾燥させるという重要な働きをしています。
これから家を建てる方は内部結露を防ぐ家づくりをしよう
後からリフォームで内部結露対策ができるといっても、内部結露が起きていないのにリフォームすることには抵抗感があったり、結露被害が進行した状況で対策するのでは遅すぎたりと、建物が建った後からの結露対策のタイミングは難しいものがあります。 そのため、内部結露対策を防ぐには、建てる前に設計者や工務店に確認して、適切な施工方法で建てるようにしましょう。
断熱材と壁の間に防湿シートを貼る
最も基本的な対策ですが、断熱材と室内壁下地の間に防湿シートを入れておくことで室内からの湿気を吸湿し断熱材が水分を含まないようにすることで、断熱材の働きが低下することを防ぐことができます。 防湿シートを貼る場合は、隙間なくきっちり貼ることが大切です。隙間があるとそこから湿気が侵入し断熱材を濡らしてしまいます。そのため、防湿シートの効果が発揮できるのは、寸分の隙間もなく防湿シートを貼ることが前提です。
結露対策対応の断熱材を選ぶ
内部結露を起こさないためには、断熱材に防湿性と耐水性の機能が備わっていることが重要です。断熱材は水分を含むと性能が低下し外気の影響を受けやすくなり、結露の原因となる室内との温度差を生んでしまいます。
外部断熱にする
在来工法で建てられた建物の場合、外部断熱ではなく断熱材を柱と柱の間、筋交いの隙間に充填していることがほとんどです。つまり、柱や筋交いは断熱されていないため、外気の影響を受けやすい状況にあります。 外部断熱は建物全体をすっぽり断熱材で囲む工法です。言ってみれば、建物全体を隙間なく布団で包んだ状態です。この工法だと、建物は外気の影響を受けにくくなり温度差が生じにくい状態になるため、結露の発生を防ぐことができます。
外壁通気工法を選ぶ
外壁通気工法は、外張り断熱リフォームと同じ考え方で、通気層を確保して湿気を排出する結露対策です。 現在、住宅の外壁仕上げ材として多く使われているサイディングは、外壁通気工法で施工されることがほとんどです。外壁通気工法が普及する以前は直貼り工法といい、柱の外側に防水シートを取り付け、その上から外壁材を取り付ける工法でした。柱と外壁材の間に隙間がなく通気による湿度の低下が見込めない工法です。
夏にも結露は発生する!結露対策は1年中行おう
冬の結露は経験がある人も多くすぐにイメージできると思いますが、夏でも結露は起こっています。夏に起こる結露は見えない部分で発生する内部結露が多いため、なかなか気づくことができません。 これまで紹介したように、内部結露は発見が遅れると大きな被害を受けてしまいます。そうならないためにも、夏の結露対策の注意点を理解しておきましょう。
見えにくいから知らない人も多い“夏型結露”
夏場はエアコンを使って部屋の温度を下げ快適に過ごすと思いますが、家中全ての部屋をエアコンによって快適な状態にすることはほとんどありません。つまり、温度が低い部屋と温度が高い部屋が隣り合わせになっている可能性が出てきます。 温度差は結露を起こす原因です。暑くてジメジメした部屋の空気が、隣の涼しい部屋の影響で冷やされ、壁の中で結露が発生します。 また、建物の基礎部分で起こりやすいのも夏型結露の特徴です。夜になって基礎部分が冷えた所に湿った空気が触れて結露します。 見えないところで起こる夏型結露は、カビやダニの発生、異臭などで気づくことが多いようです。建物の被害を防ぐため、季節を問わず一年を通して結露対策を心がける必要があります。
夏はクーラー周りと便器周りが要注意
夏の間、温度差が原因で結露が起こりやすい場所があります。夏に活躍するクーラーは注意が必要な場所です。夏は暖かく湿った空気がクーラーによって冷やされ、周囲に結露となって現れます。また、便器は夏の間も冷たくひんやりしています。そのため、温かい夏の空気が触れると結露を起こします。 クーラーの周囲も便器周りも表面結露なのですぐに気づくことができると思います。結露をそのまま放置せず、すぐに拭き取りましょう。
夏は特に換気が重要!
夏の空気は湿気を多く含んでいます。そのため、できるだけ空気を乾燥させる工夫が必要です。湿度が高いと暑く感じ、カビが発生する可能性が高くなります。そのため、換気をして湿気を取り除き、快適に過ごせる環境を作ることを心がけましょう。 換気で注意したいのは、雨の日の換気です。雨の日に窓を開けて換気すると、わざわざ湿度の高い空気を部屋の中に取り込むことになってしまいます。窓を開けて換気するときはその日の天候や湿度を確認して行いましょう。
正しい結露対策で、大事な家の寿命を延ばそう
表面結露は放置せずにすぐに拭き取ることで被害を防ぐことがわかりました。気をつけたいのは内部結露です。住宅を建てる前の段階で結露が起きにくい工法を選択するようにしましょう。特に断熱材の入れ方や防湿シート、防湿防水シートをどこに入れるかが重要です。設計者や図面できちんとした対策が取られているか確認しておきましょう。 せっかく建てた家が、正しい対策が取れていれば防げることができる結露によって寿命が短くなることがないようにしましょう。
結露対策の基本は除湿と換気!
結露を起こさないためにとにかく大切なのは除湿と換気です。外部断熱や外壁通気工法にしていても完全に結露が起きないというわけではありません。 特に、近年の住宅は高気密・高断熱に作られています。そのため、換気扇などを使用しない状態だと空気は滞り、湿度が下がりにくい状態にあります。昔のように隙間風もなくエアコンなどの普及で快適な環境で暮らすことができますが、高気密・高断熱の家は結露が起きやすい環境であることも忘れずに、しっかり対策を取ることが大切です。
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