iemiru コラム vol.170
知っていますか?ALCと呼ばれる軽量気泡コンクリートとは??
コンクリートの一つである軽量気泡コンクリートは様々な特徴がある!どんな用途で使われている?
現在、軽量気泡コンクリートは多くの建築現場で使用されています。建築業界では一般的な建築資材ですが建築業界に携わっていない場合、聞いたことはあるけど、どんな材料で、どこに使用されているのかなど具体的に知っている人は多くないと思います。そこで今回は軽量気泡コンクリートの特徴やメリットなどを紹介していきます。
ALCは、高温かつ高圧で蒸気養生されたもの
軽量気泡コンクリートは「Autoclaved Lightweight aerated Concreate」の頭文字を取ってALCとも呼ばれ「高温高圧蒸気養生された軽量気泡コンクリート」という意味を持ったコンクリートの一種です(以下、ALC)。 ALCは数種類の成分に水を加えたもので構成されています。その原材料を防錆処理した鉄筋やスチール製金網が組み込まれた型枠に流し入れた後、素材の化学反応によって発泡させます。半硬化された「ALC」を所定のサイズで切断、その後高温、高圧の蒸気にかけ長時間養生することによって、硬化。「ALCパネル」が完成されます。
ALCパネルは主に外壁工事などで使われている
ALCパネルは中高層建物の外壁や床、高層マンションの廊下側とバルコニー側の外壁、間仕切り壁、鉄骨の耐火被覆など様々な用途で使用されています。 工場で仕上げを施したパネル製品なので、現場では取り付けるだけで工事が可能です。高い場所で塗装をするなど危険で手間のかかる作業を省くことができ、外装工事の施工時間を短縮することができます。
最大の魅力は、「発砲構造」から生まれる
ALCパネルは、「材料を高温にて発泡。密度を低くして固めたもの」で、発砲構造を形成しています。 この発砲構造により実現された、「軽量」と「断熱性の高さ」などが最大の魅力となっています。
元々は古くから外国で使われていたコンクリート
ALCは1920年代にスウェーデンで開発され、1940年代にヨーロッパを中心にして世界各地に広がり使用され続けている長い歴史を持った建材です。 日本では1962年にヨーロッパから技術を導入し生産されています。単に輸入された技術で作るだけではなく、徐々に日本の建築技術を統合した日本独自の製品が作られるようになり、時代と共に発展してきました。内部に鉄筋で補強しているのも日本独自の製法です。厳しい品質管理のもと生産されるJIS認証を取得した工業化製品で、日本国内では現在3社が生産しています。
トバモライト結晶は緻密な結晶構造となっている
ALCは緻密に結合したトバモライト結晶を豊富に含んでいます。 そして、結晶構造を有する「トバモライト」は、これ以上化学反応を起こしにくい、非常に安定した物質となります。 ではこの「トバモライト」がどのようにして作られているのか、出来上がるまでの流れを詳しく紹介していきましょう。
ALCの主成分とは
ALCの主な成分は、珪石・セメント・生石灰・発泡剤となるアルミ粉末です。これに水を加えて混合液が作られます。 セメント・生石灰などは、水と反応してアルカリ成分を発生させます。このアルカリ成分がアルミ粉末と化学反応を起こすことで水素ガスが発生します。ALCにある無数の気泡は、この水素ガスによって作られたものです。 この気泡は完全に独立しているものではなく、直径0.05ミクロン程度の細かい細孔で繋がっています。
非常に緻密な結晶構造は、オートクレーブ養生によって作られる
緻密な結晶構造を作る上で欠かせない工程が「オートクレーブ養生」です。オートクレーブ養生で作られる結晶構造はALCの品質に大きく関わるため、使用される材料の選定と粉末調整には細心の注意が求められます。 ALCはこの緻密な結晶構造によって作られているため、素材性能を長い期間に渡って維持することが可能となります。
オートクレーブ養生とは?
オートクレーブ養生とは、「高温・高圧の蒸気がま(オートクレーブ)の中で,常圧より高い圧力下にて高温の水蒸気を用いて行う蒸気養生(高温高圧蒸気養生)」を意味しています。 温度や粘度など厳密に管理された状態で混合液を型に流しこみ、化学反応によって発生した水素ガスによって体積をおよそ2倍に膨張させます。同時に石灰質の水和反応によって凝固が進むことになります。 凝固が進み半硬化したALCを決められたサイズに切断し、オートクレーブと呼ばれる高温高圧の蒸気養生窯に入れ、180度以上の高温と10気圧の高圧蒸気で約10時間養生すること(オートクレーブ養生)で、完全硬化されたALCパネルが作られるのです。
オートクレーブ養生によって作られるのがトバモライト結晶
オートクレーブ養生によって、ケイ酸カルシウムのケイ酸の溶解が促進。カルシウムの比率が高くなることでトバモライトが生成されます。そのため、ケイ酸の溶解がトバモライト結晶の出来不出来を左右します。
トバモライトは元々自然界にある物質
トバモライトはもともと自然界にある無機質の物質です。そのため、気温や湿度による収縮や乾燥変形が起こりにくく、化学変化も起こしにくい極めて安定した物質となっています。 火山地帯の地下で石灰岩を含む地層にマグマが接触した際に、石灰岩カルシウムとマグマのケイ素が高温で化学反応を起こします。このとき生成される特殊な変成岩が地熱で高温、高圧になった地下水と反応してトバモライトが生成されます。 「トバモライト」は限られた条件のもとでなければ生成されない結晶物質なのです。 自然界でトバモライトが生成されるには、限られた環境条件と何万年もの長い年月が必要でとなります。気の遠くなるような長い時間を経なければ生成されることが無い物質なのです。 ALCは、自然界で何万年もかけて行われる化学反応を人工的に再現することによって作られています。
ALCの特徴によって期待される効果
軽量、耐火性、遮音性、調湿
軽量
前述の通り、発砲構造をしているので軽量です。
耐火性
ALCにある気泡が熱の伝わりを抑える役割もしてくれます。また、炎や熱を受けても有毒ガスや煙を発生させることもありません。
遮音性
無数にある気泡が「音の吸収」をすることにより、高い遮音性を有しています。
調湿
多孔構造であることから、ALCには湿度を調整する機能があります。
このほか、軽量な人工土壌というALCの特性を活かして、様々なものへ形を変えて再利用もされています(つまり、リサイクルが可能)。
ALCを建材に用いるメリットとは
では、上記のような特徴をもつALCを建材に用いることのメリットを知って、家づくりの際の参考にしてください。
ALCは内部の気泡が全体の8割を占めているので、非常に軽い
前述のとおり、ALCは無数の気泡を含み、水に浮くほど軽い建築資材です。そのため建物全体の重さを不用意に増やさなくて済みます。建物の重さは耐震性に関係しています。建物が重いほど地震で受ける影響が大きくなり建物への負担が大きくなります。 つまり、ALCを使用して建物を軽くすることは、建物への負担を減らすことにつながるのです。 また、建築資材の重さは施工のしやすさにも関係してくるので、軽い材料はそれだけ施工が楽に行えるということになります。 これにより、工期も短くなるので、人件費の節約と材料費の節約が実現し、トータルコストを減らすことが可能となります。
熱伝導率が一般的なコンクリートの半分しかないので、断熱性に非常に優れている
ALCには無数の気泡が空気層の役割をするため熱が伝わりにくくなり高い断熱効果が発揮されます。断熱性能が高いと、建物の外が暑い場合や寒い場合でもその熱が室内まで伝わりにくくなります。 室内の快適性は断熱効果が大きく影響しています。そのため、断熱性能が高いALCは、快適な室内環境を作ることに適した材料と言えます。
経年変化が非常に少なく、数十年以上の張り替えが必要ない
無機質な物質は今以上の化学変化を起こしにくく、気候や環境の変化に影響を受けにくいという特性があります。そのため、経年劣化が少なく張り替えの回数が少なく済むというメリットがあります。
湿度を調整できるので、汎用性が高い
ALCは湿度の変化にも強いため、木造などで見られる割れやたわみ、反りなどの変形を起こしにくいという特徴があります。そのため、気候や地域性を考慮することなく、あらゆる環境で用いることができます。
知っておこう。ALCを建材に用いるデメリット
一見、メリットばかりに感じるALCですが、デメリットはないのでしょうか。
水に弱い
前述の通り、ALCには調湿という性能があります。これは、吸水性が高いという特徴から生み出されています。つまりその吸水性の高さから水に弱く、長時間水にさらされることで、内部の多孔構造に大量の水がしみこみます。冬の寒い日などに凍結した場合、膨張を起こし、ひび割れの原因にもなってしまうのです。
継ぎ目が気になる
ALCを用いたパネル建材は、建材強度の低さからサイズを大きく出来ないので、小さめの造りとなっていることが多く、建物の継ぎ目が多くなってしまう傾向にあります。 また、継ぎ目が多くなることで、老朽化が進んだ時の雨漏りの可能性も高くなります。
ALCは選択肢の一つ
ALCを用いた建材には、メリットが多くあります。しかし、デメリットも存在します。 これらを、しっかりと踏まえたうえで施工業者と相談して、住まいの外装材を選ぶ際の選択肢の一つとして考えてみて下さい。 ALCを用いた外装材を使おうと決めた際には、各メーカーから様々な意匠が用意されているので理想としているデザインや周囲の景観に合ったザインなどを選ぶこともできます。 ショールームなどで実物を手にして、デザインや軽さ、手触りなど体験してみることをおすすめします。
【監修】榑林 宏之(一級建築士)
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