iemiru コラム vol.309
宅地建物取引士は住宅購入の頼れるパートナー!でも、どんな資格なの?
宅地建物取引士ってどんな資格?
不動産取引の専門資格に「宅地建物取引士」という国家資格があります。以前は「宅地建物取引主任者」という名称でしたが、宅地建物取引業法の改正にともない平成27年4月1日から「宅地建物取引士」に名称が変更になり、いわゆる「士業」に位置付けされる資格になりました。 宅地建物取引士は不動産の取引におけるプロフェッショナルとして、主に土地や家を購入する際や、アパートを借りる際に活躍します。国家資格でありながら受験要件がなく誰でもチャレンジできることや、法律や税金についての知識を取得できることから不動産関係以外の受験者も多く、宅建と略され人気のある資格です。今回は住宅購入時に活躍する宅地建物取引士の資格内容や業務権限について解説していきます。
宅地建物取引士になるためには
宅地建物取引士になるためには、一般社団法人不動産適正取引推進機構が主催している試験を受験し、合格しなくてはなりません。試験は一年に一度で毎年10月の第三日曜日に全国の会場で一斉に行われます。その試験に合格し、さらに一定の要件を満たした人が宅地建物取引士として登録することで、宅地建物取引士証が交付され宅地建物取引士と名乗ることができます。
資格試験に合格する
宅地建物取引士になるための最初のステップは、「試験に合格すること」です。 資格試験の場合は、関連する業務の経験年数や、他の保有資格を持っていることで試験が免除されることがありますが、宅地建物取引士にはそのような緩和条件は一切ありません。 したがって宅地建物取引士として活動するためには、不動産経験が何十年あったとしても例外はなく、全員必ず試験を受験し合格する必要があります。 受験要件は特にないので、性別・年齢・学歴関係なく誰でも受験することができます。 毎年7月から受験申込みの受付が開始し、インターネットもしくは郵送により申請をします。申込方法により、受験申込みの受付期限が違うため、それぞれの締切りを確認する必要があります。 試験は全国で行われていますが、受験場所は原則的に自身が居住している都道府県になります。受験料は一律7,000円で非課税です。10月の試験のおよそ2ヶ月後の12月に合格発表が行われ、合格者には合格通知が自宅に配達されます。
合格率は15%前後
宅地建物取引士は非常に人気のある資格で受験者数は毎年20万人前後ですが、気になる合格率はどの程度なのでしょうか。 平成29年の受験者数は209,534人で合格者は32,644人なので、合格率は15.6%です。つまり100人が受験したら15人程度が合格できるレベルの試験ということですので、資格試験の中では比較的難易度が高い方の試験といえるのはないでしょうか。 さらに注目したいのは、受験者の属性です。宅地建物取引士試験は受験要件がなく誰でも受験できるため様々な職業の方が受験しますが、資格の性格から一番多いのは不動産関連従事者です。普段業務で不動産に触れている人が多く受験している中での合格率15%程度ということは、初めて勉強をする人はより多くの勉強時間を要することになります。
試験には一部免除制度がある
宅建試験の問題数は全部で50問です。 実は50問の中で5点分が免除されるという制度があります。通称、「宅建試験の5点免除」とよばれるもので、この制度を利用すると46問目~50問目の合計5問が免除になり正解扱いになるのです。つまり自動的に5点最初から正解している状態でスタートできるという大変お得な免除制度です。 免除制度を利用するにはいくつかの要件があります。一つ目は、不動産会社に勤務していることです。したがって、不動産関係以外の企業に勤めている人や、学生は免除を受けることはできません。要件の二つ目は、国土交通大臣が登録した講習機関で「宅建登録講習」を受講することです。 登録講習会場は全国に設けられているため、地方に住んでいる人も受講することができますが、講習機関の種類は多く費用が機関ごとに様々ですので、通いやすさや金額を比べて選択してみてはいかがでしょうか。
合格後は登録を受けなければいけない
試験合格後すぐに宅地建物取引士になれるかというと実際はそうではありません。取引士として活動するには、合格後に「宅地建物取引士資格登録」を行う必要があり、登録できる人は次の3つのいずれかに該当しなくてはなりません。 ①宅地建物取引業の実務を2年以上経験している人 ②登録実務講習を受講し修了した人 ③国や地方公共団体、またはこれらの出資で設立された法人において、宅地建物の取得または処分 の業務経験が2年以上ある人 上記の中で、一般的に該当するのは1もしくは2ではないでしょうか。不動産会社で実務経験を2年以上積んでから宅建試験に合格した人は、すぐに登録することが可能ですが、業務経験がない人は実務講習を受講する必要があります。この講習を受けることにより、経験がなくても「2年以上の実務経験者と同等以上の能力を持っている」ということを証明できます。 要件を満たすと宅地建物取引士として登録することができ、晴れて宅地建物取引証の交付を受けられます。
事業者でも必要とされる理由
宅地建物取引士は、不動産取引時に活躍する専門家ですが、資格を取得することのメリットは不動産取引時だけではありません。不動産だけでなく、民法、税法、建築基準法など様々な分野の知識を学ぶことができるので、各種方面で重宝されます。ここでは資格を取得することのメリット4をつ紹介していきます。
①不動産業界で重宝される
不動産取引を業として行う場合は、宅地建物取引業の免許を取得しなくてはなりません。通称、宅建免許とよばれるものです。 混合されがちですが、宅地建物取引士の資格と宅建免許は異なります。宅地建物取引士は個人が取得する「資格」で、宅地建物取引業の免許は業者が取得をする「免許」です。そのため宅地建物取引士証を保有していても宅建免許を持っていなければ取引することはできません。 宅建業を行う場合は、宅建免許の他に宅地建物取引士の資格者が必要になります。各事務所の従業員のうち5人に1人の割合で宅地建物取引士を設置するよう宅建業法で義務付けられています。例えば、従業員3人の会社は最低でも1人が宅地建物取引士である必要があります。 では、従業員が6人の場合はどうでしょうか?この場合は、必要な資格者は最低でも2人以上です。事業拡大に向けて従業員を増員する際等に宅地建物取引士が必ず必要になりますので、不動産業界において非常に重宝される資格となります。
②キャリアアップに繋がる
宅建業を行う会社にとって資格者は非常に貴重な存在です。なぜなら適正な人数の資格者を設置しないと業法違反になり、営業停止などの思い処罰を受ける可能性もあるからです。そのため資格を持っていることで会社から高く評価され、昇給や昇進に繋がります。 また、一般的に不動産会社は宅地建物取引士に資格手当を与えているため、毎月の収入もアップします。会社の規模や資格者数の割合によって違いますが、月額の資格手当は1万円から3万円程度が多く、中には5万円ほど支給する会社もあるようです。 さらに、転職時にも宅建を保有していることが有利にはたらきます。求人への応募条件として、宅地建物取引士限定としている会社もあるため、どれだけの経験を積んでも資格を持っていないと応募すらできない企業が多くあるのです。
③独立するには必須となる
不動産業はパソコンと電話さえあれば開始できるため初期費用が少なく独立起業しやすい業界です。しかし宅地建物取引業を開始するには、宅地建物取引士を事務所に設置する義務があるため、資格を持っていないと独立が難しくなります。 実は代表者が資格を持っていない状態でも開業はできますが、その際は資格保有者を雇用して専任の取引士として勤務してもらう必要があります。スタートしたばかりで売り上げも安定しない中、最初から人を雇用しなくてはならないのは経営を圧迫する原因になります。また、従業員退職の際は、別の宅地建物取引士を雇わないと事業が継続できなくなるリスクがあります。このように、事業の継続が従業員の存在ありきの状態になってしまうのは非常に危険ですので、独立する際には代表者が資格を持っている状態が最適といえるでしょう。
④就職先の選択肢が広がる
宅地建物取引士の資格を保有していると不動産会社以外への就職や転職の際に非常に有利になります。 また、宅建試験は、法律や税金についての勉強をするため関連する業界から重宝されます。特に、住宅ローンを扱う金融機関では、不動産評価や住宅の買替特例についての知識が必要になるため宅建試験で学んだ内容を直接生かすことが可能です。一般企業においても、企業が所有している不動産を売却したり、経営上の理由から不動産を購入するケースがあります。そのような時にも、宅地建物取引士の知識を生かすことができますので、企業の総務部などでも活躍の場は広がるでしょう。 さらに、複数のエリアで事業を展開している企業であれば社員の社宅が必要になるため、寮や社宅の賃貸借契約の締結時にも資格者は重宝されるでしょう。 このように、一見不動産関係のみに深い関わりのある資格のようにみえますが、宅建試験で学んだ知識を生かすことで、様々な業種の企業から必要とされる存在になることができます。
独学と専門学校どちらが良い?
宅建試験の勉強を始める際、どうやって学習すればいいか分からないという方も多いのではないでしょうか。勉強方法は大きく二つあり、一つ目は「独学で勉強する方法」、二つ目は「通信講座や資格の専門学校に通って勉強する方法」です。実際のところどちらの勉強方法が効率的なのでしょうか。
効率的に合格を目指すなら通信講座
独学で学習する際、まず参考書選びからスタートします。宅建は人気資格なので、各出版社から色々なシリーズの参考書が発売されています。いかに自分に合った参考書を選ぶかが重要です。 宅建は民法をはじめとした法律関連の学習が中心で、法律初学者にとっては最初の難関になります。普段使わない法律用語が並ぶため、初めて勉強する人は理解に時間がかかる筈です。特に社会人の人は、仕事をしながら勉強する必要があるため、いかに効率的に知識を取得するかが合格への鍵です。したがって、慣れない単語を長時間かけて覚えるよりも、資格の専門学校を利用することが効果的といえます。専門学校に通わなくても通信講座を選択すれば自宅で学ぶこともできます。法律初学者の人は通信講座を利用し最短での合格を検討してみることをおすすめします。
業務の中で得られる知識もあるけど…
不動産業界の従事者が多く受験する宅建試験ですが、従事者が合格までに数年を要するケースが意外と多いようです。不動産会社に長年勤務をしていて受験し続けているのに十年以上合格できていない人も一定数いるというから驚きです。 なぜ、普段の業務で不動産を扱っているのに合格できないのでしょうか。理由は二つ考えられます。一つ目は勉強時間の確保です。普段サラリーマン生活を送っていると仕事後に勉強時間を確保するのは簡単ではありません。特に不動産業は顧客が個人のケースが多いため、お客様の都合に合わせて営業すると残業が続くことも珍しくありません。そのため、日々の業務に追われて思うような勉強時間を確保できずに不合格になる人が多いのです。 二つ目の理由は、実務と試験内容のずれです。普段から不動産に触れているので、一般の人よりも一見有利にみえますが、実務と試験では微妙に内容が異なります。そのため不動産業の従事者は下手に実務の知識を持っている分、混乱してしまうのです。したがって、不動産業界従事者の方も、実務と試験内容は別と割り切って、専門学校を通して試験に受かるための学習をしていく必要があるでしょう。
宅地建物取引士資格の気になる疑問
試験合格、登録、資格証交付と3つの段階を経て宅地建物取引士になることができます。それぞれ有効期限や更新の必要性が異なります。宅建業に従事しておらず今後具体的な予定がない人は、登録せずに合格者のままにしておく方が費用の面でお得なことがありますので、それぞれの有効期限や更新必要性について確認しておきましょう。
資格の更新は必要?
資格試験の合格の有効期限は無期限です。つまり、不正受験などで合格が取り消されない限りは、一生「試験合格者」でいられます。そのため当面不動産業界に従事する予定がない人は、登録せずにそのままにしておくことも可能です。登録する際には登録手数料として37,000円もかかりますので、試験合格者の状態にしておいて、宅地建物取引士として業務をする必要性が生じたときに登録手続きをするのでも遅くありません。今後の資格の活用予定を踏まえて、個別に判断するといいのではないでしょうか。なお、宅地建物取引士の登録も有効期限はなく一生有効です。
宅地建物取引士は有効期限がある
宅地建物取引士は一度登録すれば無期限で有効ですが、宅地建物取引士証の交付を受けると有効期限が発生します。具体的には初回の交付日から起算し5年間が有効期限です。その期間が過ぎるとその資格証は無効になり、更新手続きをしないと宅地建物取引士としての業務は行うことができなくなります。 ただし、資格証が失効しても登録が抹消されるわけではありませんので、失効後また資格証が必要になった時に手続きをすれば新たに資格証の交付を受けることができます。
更新手続きには講習が必須
宅地建物取引士の有効期間は5年間です。資格者は5年ごとに更新手続きをしなくてはなりませんが、その際に講習を受ける必要があります。講習は各都道府県で行われ、5年間の間に生じた法律改正や税制改正、また宅建業界を巡った時事的なトラブルについての注意がなされます。午前にスタートし終了するのは夕方です。1日しっかりと講習を受けることになるので、仕事の休暇願の申請などの予定をたてておく必要があるでしょう。
宅地建物取引士資格は信頼の証
宅地建物取引士資格は、消費者から信頼を得るためにも持っておく必要がある資格です。顧客の立場で考えると、住宅の売買や賃貸などの不動産取引を依頼する際に、資格を持っていない人より持っている人の方が安心してお願いできるものではないでしょうか。
悪質な不動産会社を見極められる
宅建業法に定められている宅地建物取引士が担う役割として、「独占業務の遂行」と事務所における「有資格者の設置義務」があります。 独占業務の中で特に重要なのは顧客に対して行う「重要事項説明」です。重要事項説明とは、売買・賃貸の契約が行われる前に契約内容について顧客がしっかりと理解できるよう、不動産のプロである宅地建物取引士が契約内容の重要な部分について説明する行為です。この説明は宅地建物取引業法で定められているため、宅地建物取引士以外が行うことや、説明自体を省略することは法律違反です。しかし悪質な不動産会社では、宅建取引士でない無資格の従業員が重要事項説明を行うことがあります。一般の人は宅地建物取引士のみが説明できるということを知らないことが多く、今でもこういった不正が行われています。 宅地建物取引士がいない会社は、そもそも業法を守らない違法行為状態なので、そのような悪質な会社と取引をしないための判断材料にもなります。
全ての業務が法律によって縛られている
宅地建物取引士の業務は、宅地建物取引業法という法律で定められています。そのため、資格者は法律に従い正しい業務を遂行しなくてはなりません。 特に重要事項説明書の説明は、不動産に詳しくない一般の人が契約内容を誤解した状態で契約して不利益を得ないように行われる大事な説明です。したがって説明書は宅地建物取引士が全て読み上げながら説明をする必要があります。 また、説明する際は、有資格者であることを顧客が理解できるように、宅地建物取引士証を提示しなければなりません。このように、資格者は業務に対して一定の義務が課せられているため、消費者は専門家からの正しい説明を受けた上で不動産の購入や売却について判断することができるのです。
宅地建物取引士は適切な不動産売買を行うパートナー!
不動産の取引には、法律や税金など一般の人にとっては複雑で理解しにくいことが関係しながら進んでいきます。そのため、知識のない人は悪質な業者に騙されたり、誤った認識のもと物件を契約して不利益が生じたりすることがないようにしなくてはなりません。 それには、宅建試験の合格という狭き門をくぐった不動産の専門家である宅地建物取引士の存在が不可欠です。住宅を購入する際には、営業マンの人柄や情報力だけでなく、宅地建物取引士の有資格者かどうかを確認することで、正しい知識の元で適切なアドバイスを受けることができ、失敗しない物件購入ができるのといえるでしょう。
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