iemiru コラム vol.372
土地の取引時には公示価格を参考にしよう!公示価格とは一体何?
公示価格とは
土地を取引きする時に、ぜひ参考にして頂きたい「公示価格」。皆さんは、この公示価格という言葉を耳にした事はありますか?最初に、公示価格とは一体何なのか、土地の取引でどのように関わってくるのかなどを説明します。
土地の取引で指標となる土地の価格
住宅を購入すると、売買契約書に建物の価格の他に土地の価格が記載されます。この土地の価格は、地価公示法(※)に基づいて、国土交通省が選定した土地を対象とし、この土地であればこれぐらいで売買されるであろうと調査し、立地条件などを考慮して決定した1㎡辺りの価格を基に計算されます。土地の価格を計算する時の1㎡辺りの価格、これが「公示価格」なのです。公示価格を確認すると、取引を考えている土地の広さに公示価格を掛けて計算すれば、土地の価格が分かるという仕組みになっています。 ※地価公示法…1969年に施行され、不動産関係者ではない一般の方でも、安心して土地の売買取引ができるように、土地の適正価格を定期的に公示する制度。
毎年3月に国土交通省から公表される
公示価格は、毎年3月に国土交通省から公表されます。3月に公表される公示価格は、公表される年の1月1日時点の全国の標準地の土地の価格となります。
公示価格はどうやって決まるの?
先ほどの説明にもありましたが、公示価格は毎年3月に国土交通省より公表されます。すなわち、公示価格は毎年変わるという事になります。地域によって、公示価格は異なってくるので、土地の取引をする予定がある人は、必ず国土交通省のHPを確認しましょう。
必ず2人以上の不動産鑑定士によって調査される
公示価格を決定するために、まず調査する土地まで不動産鑑定士が足を運びます。実際に土地を調査する不動産鑑定士(※1)は、2人以上と法律で決められています。なぜ2人以上の不動産鑑定士じゃないといけないかというと、1人だと調査ミスや、最悪不正を起こしたりする可能性があるからです。現地に向かう際は、2人一緒にではなく、それぞれ1人ずつが現地に向かい、土地の価格をいくらぐらいで設定するのかを調査します。そして、それぞれの調査結果を、国土交通省に提出します。調査においては、取引事例比較法(※2)や収益還元法(※3)を用いて土地の価格を決定します。 ※1不動産鑑定士…不動産鑑定士とは、不動産の鑑定評価を行う国家資格で、不動産の鑑定を行うプロフェッショナルです。適正な土地の価格を算出するために、様々な方法を取り入れて、不動産の鑑定を行います。 ※2取引事例比較法…取引事例比較法とは、土地の調査方法の1つです。まず、調査する土地の近隣の土地や条件が近い土地の実際に取引された事例をいくつかピックアップし、1㎡辺りの土地の価格を計算します。次に、計算した1㎡辺りの土地の価格に、調査する土地の広さを掛けて計算します。 例えば、1㎡辺りの土地の価格が10万円で、調査する土地の広さが100㎡の場合は、10万円×100㎡となり、その土地の価格は、1,000万円となります。そして最後に、計算した1,000万円という土地の価格から、前面道路(広いのか狭いのか等)、方角(南向き等)や現状の経済状況(景気が良いの悪いか等)を考慮して土地を調査する方法です。 ※3収益還元法…査定する土地が、将来どれぐらい収益が見込めるのかどうかを考慮して、土地の価格を決定する方法です。さらに、収益還元法は、直接還元法とDCF法の2パターンに分かれます。 ・直接還元法…1年間で得た純利益(収益から経費を引いたもの)を還元利回りで割って、土地の価格を計算する方法です。 ・DCF法…将来得られるであろう純収益を現在の価格に割り引いて、その合計額を土地の資産価値とする方法です。
土地鑑定委員会が審査し最終的に公示価格が決定される
不動産鑑定士は、調査結果を国土交通省にある土地鑑定委員会(※)に報告します。報告を受けた土地鑑定委員会が、それぞれの不動産鑑定士の調査結果を基に、さらに細かく厳重に審査し、地域間等のバランスを調整します。そして最終的に公示価格が決定します。公示価格は、国土交通省すなわち国が我々国民に対して公表するものです。国が公表するのですから、嘘偽りは決して許されません。2人以上の不動産鑑定士が適正に調査し、さらに、土地鑑定委員会がしっかり審査・調整を行う事によって、より正確な土地の価格を計算し、公示価格として国土交通省より公表されています。 ※土地鑑定委員会…日本の国土交通省の審議会等の一つ。国土交通省設置法第6条に基づき設置された機関です。
公示価格を調査する地域は全国なの?
日本国内には数え切れないほどの土地が存在しています。この日本国内の土地を全て、不動産鑑定士に実際に足を運ばせて調査するのは、かなりの労力と人手が必要となります。 公示価格を調査する土地は、本当に日本国内にある土地全てが対象となるのでしょうか?次に公示価格を調査する地域について説明します。
公示価格を調査する地域は国土交通省により選定されている
実は公示価格を調査する地域は、国土交通省によって選定されています。確かに日本国内にある土地を全て調査するとなると、不動産鑑定士が何人いても足りないですよね。選定基準は、都市計画区域(※)、そして土地の取引がある程度見込まれる地域が対象とされています。土地の取引があまり見込まれない地域の公示価格を公表しても、参考にする人がいないですし、大きな労力と時間が無駄になってしまう恐れもあります。公示価格は土地の取引をする上で指標となる重要な価格なので、ある程度取引が見込まれる地域を国土交通省が選定しているのです。 ※都市計画区域…都市計画区域とは、計画的に街づくりをする地域です。国民が安心して暮らせるように、都市に施設を建てる計画や、土地を利用するにあたり規制がかかる(住宅が多い地域には工場は建てられない等)地域となります。
公示価格を知りたい時にはどうしたらいいの?
では次に、土地を取引する予定がある時に、公示価格を確認するにはどうしたらいいのかを説明します。
公示価格は個人でも法人でも誰でも確認する事ができる
公示価格は、土地の取引時に参考にするものなので、不動産事業に携わっている人しか確認できないのではないかと思われがちです。しかし実際は、公示価格は不動産事業に携わっている人だけではなく、一般の個人の人でも確認する事ができます。極端な話ですが、小学生でも確認する事ができます。もちろん、法人でも支店や店舗を新たに建築する際には、参考資料として、公示価格を確認する事ができます。
国土交通省のHPにある「土地総合情報システム」を利用しよう
では、公示価格は一体どこで確認できるのでしょうか?実は、国土交通省のHPにある「土地総合情報システム」で簡単に確認ができるのです。 土地総合情報システムから公示価格を確認したい地域・用途区分(住宅地や商業地、工業地等)を選択します。いくつかヒットした中から、自分が確認したい土地に1番近いものをクリックし、公示価格を確認します。土地総合情報システムを利用する際、手数料は発生しません。パソコンや携帯から、いつでも好きな時に確認する事でできるので、土地の取引を考えている人は、ぜひ1度利用してみてください。
公示価格を補助してくれる基準地標準価格を参考にしよう
さらにここからは、公示価格だけでなく、公示価格を補助してくれる「基準地標準価格」について説明します。
基準地標準価格は都道府県が発表する土地の価格である
公示価格は国土交通省によって公表されますが、基準地標準価格は都道府県によって公表されます。基準地標準価格は、毎年7月1日時点の日本全国にある基準地を対象とし、その年の9月に公表されます。公示価格の公表月が3月となっているので、基準地標準価格は、公示価格の半年後に公表される形となっています。 基準地標準価格の調査対象地域は、都市計画区域だけではなく、都市計画区域外も含まれます。調査対象地域が、公示価格よりも多くなるという訳ですね。 そして土地を調査する不動産鑑定士は1人以上となり、2人以上である公示価格と異なります。
公示価格と基準地標準価格の2つを比較して参考にしよう!
土地を取引する時の参考資料として、これまでお話してきた公示価格に加えて、基準地標準価格も確認するようにしましょう。公示価格は毎年1年に1回、3月にしか公表されません。国土交通省が公表する公示価格は、あくまでも1月1日時点での土地の価格なので、例えば8月に土地の取引をする予定で、土地総合情報システムで公示価格を確認しても、8月には土地の価格が変動している可能性があります。 一方、基準地標準価格は、公表月や調査対象地域などが異なるだけで、公示価格と同じような調査方法となります。公示価格が公表されてから半年経った土地の価格として基準地標準価格が公表されるので、3月に公表された公示価格よりも最新の土地の価格となります。土地の取引時期によっては、公示価格と基準地標準価格の両方を確認し、参考にしましょう。
公示価格と間違えやすい路線価格とは?
ここからは、さらに上級編という事で、公示価格と間違えやすい「路線価格」について少し触れたいと思います。
路線価格とは?
路線価格とは、道路に面している土地の1㎡辺りの価格です。路線価格は国税庁が公表します。公示価格と同様、国が公表するものとなっています。 路線価格の調査対象地域は、公示価格や基準地標準価格よりも多く設定されています。なぜ路線価格の調査対象地域が公示価格や基準地標準価格よりも多いのかというと、路線価格は我々国民が支払う税金に大きく関わってくる価格となっているからです。国としては、税金をしっかり納めてくれないと困りますよね?税金の未納を防ぐためにも、路線価格の調査対象地域は、多く設定されているのです。そして、路線価格はさらに、「固定資産税路線価」と「相続税路線価」の2つに分かれます。 ・固定資産税路線価…不動産を保有していれば必ず支払わなければならない固定資産税を決める際に使用するものとなります。固定資産税路線価は毎年1月1日時点の土地の価格で、各市町村が公表します。公表月は、毎年4月となっています。固定資産税路線価は、公示価格が100%とすると、70%で設定されています。例えば、公示価格が10万円の場合、固定資産税路線価は7万円となります。そして、固定資産税路線価の特徴として、3年に1回、固定資産税路線価の見直しがされます。 ・相続税路線価…父母、祖父母等から財産を相続・贈与を受けた際に発生する相続税や贈与税を計算する時に使用するものとなります。相続税路線価も、公示価格や固定資産税路線価と同様、毎年1月1日時点の土地の価格で、国税庁が公表します。公表月は、毎年7月となっています。相続税路線価は公示価格が100%とすると、80%で設定されています。こちらも例を出すと、公示価格が10万円の場合、相続税路線価は8万円となります。
路線価格はどこで確認ができるの?
公示価格の確認場所は、国土交通省のHPにある土地総合情報システムでしたよね。 路線価格の確認場所は、国税庁のHPにある「財産評価基準書 路線価図・評価倍率表」となります。もし、家にパソコンが無い・携帯で見る方法が分からないなどの場合は、各地方にある税務署(確定申告を行う場所)で、「(路線価格が記載されている)路線価図を見たい」と申請する事によって、誰でも確認する事が可能です。申請料はかかりません。
時間がある場合は路線価格もチェックしておこう!
路線価格は公示価格とは異なり、土地の取引時に関わるものではありませんが、土地を保有した場合に関わってくるものになります。つまり土地を保有した後に支払っていく税金に大きく関わってくる指標となります。路線価を知っておけば、「この土地を購入すると1年でどれぐらいの固定資産税が支払わないといけないのか」・「今保有している土地を子どもに贈与したいけどどれぐらいの相続税が発生するか」などの目安をたてる事が可能ですので、チェックしておくことをおすすめします。
最近の公示価格の推移は?
最後に、ここ数年の公示価格の推移を見ていきましょう。
平成30年3月に公表された公示価格について
平成30年3月に公表された公示価格は、全国的に住宅地の平均が10年ぶりに上昇しました。三大都市圏(東京エリア・大阪エリア・名古屋エリア)では、住宅地&商業地の平均が、昨年よりも上昇という結果になりました。地方圏に関しては、商業地の平均が26年ぶりに上昇し、住宅地の平均は少し下落しましたが、全用地の平均は、見事26年ぶりに上昇という結果になりました。
公示価格が上がるタイミングってどんな時?
公示価格が上がるタイミングは、様々です。2年後、2020年に東京オリンピックが開催されますよね?実はこの東京オリンピックが開催される辺りで、東京の土地が上がると言われています。オリンピックが開催されるとなると、たくさんの人が集まってきます。日本国内だけでなく、もちろん海外からも集まるでしょう。人が集まるという事は、当然ながら住居が必要となります。宿泊施設もたくさん建設しなければなりません。建物が建設されるという事は、当然ながら、土地の取引も発生します。土地の取引が盛んに行われると見込まれる場合には、公示価格が上がる傾向となっています。 もっと近場で起こりえる例で説明すると、アウトレットモールや大きいショッピングモール(イオンモール、ららぽーと等)が建築されるとなると、その付近に引っ越す人が増える→家をたくさん建てる必要がある→土地の取引が増える→公示価格が上がるという方程式が生まれます。もし、今お住まいの家の近くに、何か大きな施設が建築されるのであれば、土地の価格が上がる可能性があるので、1度土地総合情報システムで確認してみてください。
公示価格は土地の取引時には指標になる重要な価格の1つ
公示価格は毎年変わるので、土地取引時には必ずチェックしよう
土地の取引は、大きな資金が動きます。大体いくらぐらいで取引されるのかを知っておくためにも、公示価格を取引前にしっかりと確認しておくことで、トラブル防ぎ、円滑に夢のマイホームを手に入れましょう。 ただし、一度調べたからと安心せず、公示価格は毎年変わるという事も忘れないよう心掛けてくださいね。
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