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iemiru コラム vol.51

【一級建築士監修】体調不良はシックハウス症候群が原因!?その原因と対策を徹底解説します!

シックハウス症候群とは?

待ちに待った新居が完成!引っ越しもおわり、いよいよ、夢にまで見た生活が始まります!と思ったら、どうも体調がすぐれません。風邪のような症状なのになかなか良くならなかったり、花粉の季節でもないのに花粉症のような症状が出たり。 もしかして「シックハウス症候群」かも? 「シックハウス症候群」とは、住居内での室内空気汚染を原因とするさまざまな健康障害のことです。 今回は、「シックハウス症候群」の症状と原因、そして対策について説明します。

シックハウス症候群の症状

「シックハウス症候群」にはどのような症状があるのでしょうか。 たとえば、目が乾いたようにショボショボしたり、反対に涙が止まらなかったり、しみるような痛みを感じたりなどの症状があります。また、鼻づまりや粘度の少ない鼻水が流れ出つづけるなどの鼻の症状や、のどが腫れて痛む、咳が出るなどの症状がありますし、皮膚に症状が出ればアトピー性皮膚炎になることもあります。酷い症状としては吐き気やめまいが起きることもあります。 また、はっきりした症状が出ていなくても何となくイライラする、落ち着かないなどの状態が続くこともありますし、複数の症状が同時に起きることにより頭痛や不眠などにつながり、精神的なダメージやストレスからうつ病などの更に深刻な症状を引き起こすこともあります。 このように、症状が様々で個人差があるうえ、風邪や花粉症とよく似た症状もありますので、病院に行っても、すぐに「シックハウス症候群」であることがわからないこともあります。

シックハウス症候群の原因

「シックハウス症候群」に見られる症状は、主に様々な化学物質に対するアレルギー反応や化学物質過敏症の症状です。その中でも、「住宅」に起因して発生する症状を「シックハウス症候群」と呼んでいます。 症状を起こさせる化学物質として代表的なのは住宅の内装などに使われている建材から放散されるホルムアルデヒドやトルエンなどの化学物質です。石膏ボードの上にビニールクロスを貼った壁が主流になり、クローゼットや棚などの家具類に価格が安く美しい化粧板が使われるようになりましたが、それらの新しい建材に使用されている塗料や接着剤からは微量ながらも揮発性有機化合物(化学物質)が放散されています。 また、新建材が使われ始めるとほぼ同時期に住宅の気密性が高まってきたことも「シックハウス症候群」が問題になりやすくなった原因の一つです。すきま風の少ない家の方が快適に過ごせることは多いのですが、気密性が高い住宅は換気が不十分になりやすく、化学物質で汚染された空気が溜まってしまうのです。 なお、建材に使われる人工的な化学物質だけではなく、ダニやカビが発する物質もアレルギーの原因となりえます。こうした物質が気密性の高い住宅の空気に充満し、それらによって起こる症状も広い意味では「シックハウス症候群」と言えます。あるいは、タバコや冷暖房機器から発生する化学物質による空気の汚染の影響でも同じような症状が引き起こされることもあります。 症状が様々であることから、また、同じ住宅に住んでいる人でも発症する人と発症しない人がいるなど、これらの化学物質に対する感受性には個人差があると言えますし、原因も一つだけつけではなく、複数の原因が複合的に絡み合い症状につながっていると考えられます。 そのため、正確な診断をしてもらうためには、「シックハウス症候群」や「化学物質過敏症」、「アレルギー」などを専門的に扱っている病院で診てもらう方が良いでしょう。

シックハウス症候群の予防策

「シックハウス症候群」予防の観点では、平成12年に厚生労働省と国土交通省から出された指針において、ホルムアルデヒドとトルエン、キシレン、パラジクロロベンゼンの4つの物質の室内濃度の指針が出されたのをはじめとし、現在では13物質について室内濃度の指針が出されています。 ホルムアルデヒド 合板・壁紙類の接着剤 0.08ppm トルエン 内装材・家具類の接着剤、塗料 0.07ppm キシレン 内装材・家具類の接着剤、塗料 0.20ppm パラジクロロベンゼン 衣類用防虫剤、芳香剤 0.04ppm アセトアルデヒド 接着剤、防腐剤、喫煙 0.03ppm エチルベンゼン 内装材・家具類の接着剤、塗料 0.88ppm スチレン 断熱材 0.05ppm フタル酸ジーn―ブチル 塗料、顔料 0.02ppm クロルピリホス 殺虫剤・シロアリ駆除 0.07ppb(小児0.007ppb) テトラデカン 灯油、塗料 0.04ppm フタル酸ジー2―エチルヘキシル 7.6ppb ダイアジノン 殺虫剤 0.02ppb フェノブカルブ 殺虫剤・防蟻剤 3.8ppb この指針は一生それらの物質に触れ続けても健康への有害な影響を受けないことを前提としたものです。 また平成15年には建築基準法が改正されました。それ以降に建てられた住宅では化学物質の少ない建材(F☆☆☆☆)の仕様や24時間換気設備などの「シックハウス症候群」対策が取られるようになり安心度は高まりましたが、対策済みの建材を用いても化学物質の放散がゼロになったわけではありませんので、換気などの対策は自身で取る必要があります。 住宅の換気には、換気扇を使った強制換気と窓を開放する自然換気が考えられますが、ただ換気扇をつけたり、一箇所だけ窓を開けたりしても効率よく換気はできません。必ず、空気の入り口と出口を確保する必要があります。 換気扇を付ける場合には、壁に設置されている吸気口を開放するか、換気扇から適度に離れた位置の窓を開きます。換気扇に近い位置の窓を開けても、近い範囲での空気の入れ替えしかできないので注意が必要です。窓を開けて自然換気をする場合も、南側の窓と北側の窓、一階の窓と二階の窓など家の中に風の通り道を作る工夫をしましょう。 竣工直後や気温が高い日には放散される化学物質の量も多くなりますので、竣工して住み始めてすぐの時期や、夏場ほど風通しに気を付ける必要があります。基準法改正後の新築住宅では建材や仕上げ材によるシックハウス症候群は減りましたが、輸入家具などから放出される化合物での発症の事例がありますので、特に注意が必要です。 また、ダニやカビの発生をおさえる対策も重要です。カビやダニは湿気の多い場所を好みますし、人が発するフケや毛髪などのたんぱく質を栄養にして繁殖します。 キッチンやバスルーム、トイレなどの水回りの換気をしっかり行うほかに重点的に掃除を行う。また、タオルや布団、毛布、クッションなどの布製品に入り込んで増えるのを防止するために、こまめに洗濯をしたり太陽にあてたりといった対策が有効です。 このような、「シックハウス症候群」を起こしづらい環境を整える対策をとると同時に、「シックハウス症候群」になりづらい体質を自分で作っていくのも対策になります。予防という意味では、家にこもって生活するのではなく、スポーツやサウナで汗を流すことで自律神経のバランスを整えることも、他のアレルギー症状への対策と同様に効果が期待できます。

シックライフという大きな視点で捉えよう

今回は「シックハウス症候群」について説明をしてきましたが、化学物質に対するアレルギーや化学物質過敏症の症状は、住宅によってのみ引き起こされるものはありません。より大きな大気汚染や水質の汚染によっても、同じような症状が引き起こされます。 対策として挙げた換気や掃除などについて「シックハウス症候群」の対策だと思って行うと、義務感も生じてきますし、別なストレスを引き起こして更に症状を悪化させる原因にもなりかねません。 そこで、外の空気を取り入れたり旬の食べ物を楽しんだりなどによって季節を感じ、適度な運動をしながら汗をかくべきときには汗をかくという生活を積極的に行うことで、物理的にも精神的にも健康的な生活を送ろうという、大きな視点で捉えてみたらどうでしょうか。 この視点においては、これらの症状を「シックハウス症候群」という住宅にだけ着目した呼び方ではなく「シックライフ」という呼び方をします。 病気として適切な治療を進めていくのは大変重要で継続的に行う必要がありますが、逃れえない「病んだ家」の問題ではなく、食品や飲料水など口に入るものや日常的な生活用品への注意や適度な運動、ストレスの発散など、心身ともに健康的な生活を送るための行動を心がけ、より総合的な「シックライフ」への対策を行っていくことが重要です。

【監修】    やすらぎ介護福祉設計 斉藤進一 (一級建築士・シックハウス診断士補)

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